秋山流「村上春樹の歩き方」

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先日、BSテレ東の番組「あの本、読みました?」を観ていたら、最初に読むべき村上春樹の本が紹介されていた。

テレ東プロデューサーが「海辺のカフカ」を推奨し、鈴木保奈美が「1Q84」を推奨していた。

私からすると「なんでそのチョイス?っていうか、村上春樹の初期の本を全然読んでないだろ!」と、テレビに向かってツッコミを入れたほど。

ということで、誠に勝手ながら、秋山流「村上春樹の歩き方」を紹介したい。

以前の記事でも書いたけど、村上春樹で最初に読む小説は、断然『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。

村上春樹は、初期の頃の作品が良いとされていて、その中でも最高傑作との呼び声が高いのが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。

次に読むのは、小説ではなくてエッセイをお勧めしたい。

大昔に書かれたエッセイだけど、今読んでも面白いのが『村上朝日堂』。

挿絵は安西水丸さんが描いているけど、安西さんが描く村上春樹のイラストが激似な上に、誰にでも簡単に描けてすごく好き。

私も安西さんのお陰で、村上春樹の似顔絵が描けるようになった。

村上春樹って、難しいことや訳のわからないことを考えてそうだけど、実際は結構ユーモア溢れる人だとわかる。

今でも鮮明に覚えているのは「村上春樹はフリオ・イグレシアスが嫌い」という話。フリオ・イグレシアスは「ナタリ〜」の歌を歌っているスペインの歌手です。

「村上春樹ってこんな人なんだ」と、エッセイを読んで、何となく村上春樹の人となりを理解できると、村上春樹の小説を読む際に、小難しく感じなくなる。

『村上朝日堂』は他に、『村上朝日堂の逆襲』と『村上朝日堂 はいほー!』なども出版されていて、どれも安西さんとのタッグで超オススメ。私も持ってます。

エッセイを読んだ後は、短編小説を読んでほしい。

村上春樹の短編小説は読みやすい上に、短編から長編小説になった話もあるので、「あの時短編で読んだ話ね!」と、繋がりが見えて面白い。

登場人物も村上春樹の色んな小説で登場する人物が書かれていたりして、「あの人がここにも登場している!」と、発見もある。

短編小説の中でも、村上春樹の小説を理解するのに役立つのが『回転木馬のデットヒート』。

この小説の『はじめに』で村上春樹自身も書いているように、この小説は事実に基づいて書かれた小説なので、実際にはノンフィクションに近い小説らしい。

「こんな奇妙なことって実際にあるんだな。そして、そんな奇妙な話が集まってくる村上春樹だからこそ、あの小説が書けるのか。」と、何だか少しだけ村上春樹の小説を理解できた気持ちになる。

最後にオススメするのが、『僕と鼠とジェイ』の一連の小説。

  • 風の歌を聴け(デビュー作)
  • 1973年のピンボール
  • 羊をめぐる冒険(上下巻)
  • ダンス・ダンス・ダンス(上下巻)

知らない人もいそうだけど、この4つの小説は全部繋がっている。

できれば村上春樹のデビュー作である『風の歌を聴け』から読んで欲しいけど、一番とっつきやすい『羊をめぐる冒険』と『ダンス・ダンス・ダンス』を読んだ後で、最初の2冊を読むと読みやすいかも。

ここまで読めば、村上春樹を何となく理解した気持ちになれるので、その後は、自分の好きなものを読めばいい。

私も村上春樹の全部の小説が好きな訳じゃない。

『ノルウェイの森』は嫌いだし、『ねじまき鳥クロニクル』はかなりグロい描写があるので、想像力が豊かな私には、もう二度と読めない。

でも、初期の頃の作品は良い作品が長編小説・短編小説・エッセイ問わずに多いので、お暇な年末年始にでも読んで欲しい。